
クリーフストラ症候群は、9番染色体9q34.3領域にあるEHMT1遺伝子の欠失または新生変異(突然変異)により起こります。
EHMT1は、ヒストンをメチル化して遺伝子の働きを調整する酵素を作る遺伝子で、正常な発達や身体機能の維持に重要な役割を持ちます。
多くの患者では、EHMT1を含む染色体の一部が欠失しており(9q34欠失症候群とも呼ばれる)、約4人に1人では欠失ではなくEHMT1遺伝子そのものの変異が原因です。これにより酵素が正常に働かなくなり、複数の臓器や組織で遺伝子の調節がうまくできず、特徴的な症状が現れると考えられています。
また、クリーフストラ症候群2では、7番染色体7q36.1にあるKMT2C遺伝子が原因となることがあります。
発症の多くは、卵子・精子や胎児期に起こる新しい変異による孤発例で、家族内に患者がいないことが一般的です。
ただし、まれに親の均衡型転座が関与する場合があります。
遺伝形式は理論上は常染色体優性で、親が発症している場合は子どもへの遺伝確率は50%です。
クリーフストラ症候群は、染色体9q34領域の欠失や新生変異によって起こる、非常にまれな遺伝子疾患です。
発達や知的機能、顔立ちや身体の特徴、内臓の形成などに幅広い影響がみられますが、症状の現れ方や程度には個人差があります。
発達遅滞・知的障害
多くの方に中等度~重度の知的障害がみられますが、軽度または正常範囲内の方もいます。
言語・コミュニケーションの特徴
発語が大きく制限されることが多く、流暢に話せる方は少ないとされています。一方で、理解力や非言語的コミュニケーション能力は比較的保たれていることが多く、手話やジェスチャー、絵カード、タブレット内の写真などを用いて意思疎通が可能な場合があります。
運動発達
乳児期から筋緊張低下がみられ、運動発達はゆっくりですが、多くの方は2~3歳以降に自立歩行が可能になります。
行動・神経症状
自閉スペクトラム症様の特性、睡眠障害、常同的な行動、軽度の自傷行為がみられることがあります。
思春期以降に無関心や反応の低下など、緊張病様の症状が現れることもあります。
その他
てんかん発作、発達退行がみられる場合があります
顔立ちの特徴
広い額、左右の眉毛がつながる、目と目の間が広い、短く上向きの鼻、テント状の上唇、外向きに反った下唇、突き出た顎などがみられることがあります。
年齢とともに顔の中部後退や顎の突出が目立ち、やや粗い顔立ちになる傾向があります。
頭部・口腔の特徴
小頭症や短頭症、舌が大きい(巨舌)、歯の早期萌出や乳歯が長く残るなどの歯の異常がみられることがあります。
成長・体格
出生時体重は正常〜やや大きめで、小児期以降に体重が増えやすく、肥満となる方もいます。足首から先が内側に入り込み、足の甲が下を向く内反足の方もいます。
内臓・身体の合併症
先天性心疾患(心室中隔欠損症など)、脳梁欠損症、腎臓や泌尿生殖器の異常、消化管症状、視力や聴力の異常、呼吸器感染を繰り返すなど、さまざまな合併症がみられることがあります。

クリーフストラ症候群は、以下の遺伝学的検査などで診断される事例があります。
① 染色体マイクロアレイ(CMA)検査
9q34.3領域の微細欠失を検出する方法で、最も一般的な第一選択の検査です。
② EHMT1遺伝子解析(シーケンス解析)
マイクロアレイ検査で異常が認められない場合に行われ、EHMT1遺伝子の点変異(塩基配列の変化)を調べます。
また、「小頭症または短頭症を伴う重度の知的障害(特に言語発達の遅れ)」、「成長障害」の2つの主症状を認め、遺伝学的検査により9番染色体の9q34に欠失を認めるかもしくはEHMT1遺伝子異常を認めた場合にクリーフストラ症候群と診断されます。
本質的な治療はまだ確立されておらず、症状に応じた対症療法が主な治療となります。
知的障害に対しては、年齢に応じたケアや教育プログラムなどが行われることがあります。
行動上の問題、てんかん、睡眠障害、視覚、聴覚、心臓、腎臓、泌尿器科など幅広い症状に対してそれぞれの診療科での治療や定期的な検診を行っていく必要があります。
動物実験での段階ではありますが、理化学研究所の研究グループによってクリーフストラ症候群の病態マウスの脳機能不全を生後治療した研究が報告されています。

クリーフストラ症候群は、染色体や遺伝子の変化によって起こる疾患であり、現在の医学では予防する方法はありません。
妊娠中の行動や生活習慣、育て方などが原因で発症する病気ではなく、ご家族の責任によるものではありません。
多くの場合、この疾患は受精後の発生過程で偶発的に生じる新しい遺伝子変化によって起こります。
そのため、次のお子さんに同じ疾患が生じる可能性は一般的に低いとされていますが、ご家庭ごとの状況によって異なる場合もあります。
不安がある場合には、遺伝カウンセリングを受けることで、検査結果の整理や再発リスクについて専門家から説明を受けることができます。
不安や疑問を一人で抱え込まず、安心して相談できる場があります。
予防はできなくても、正しい情報を知ること、支え合えるつながりを持つこと、早期から必要な支援につながることはできます。
私たちは、患者さんとご家族が「ひとりではない」と感じながら、日々の育児や生活に前向きに向き合えるよう、情報提供とつながりの場づくりを大切にしています。
※本疾患の症状や経過には個人差があり、すべての方に同じ特徴がみられるわけではありません。
診断や治療方針については、必ず専門医とご相談ください。
医学的知見は日々更新されているため、最新情報は専門機関の情報もあわせてご確認ください。
◆参考:遺伝性疾患プラス
https://genetics.qlife.jp/diseases/kleefstra/

2025年4月に小児慢性特定疾病として認定される見込みです。
指定難病については、9⒬34欠失症候群はすでに認定されていますが、突然変異の患者さんは対象に含まれていません。
そのため、当会としては突然変異の患者さんも含めた指定難病の認定にむけて啓発活動を行っています。